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2014.04.09

ベルリンでサイン会&個展最終日に在廊します

【ベルリン個展】
・3月7日〜4月20日(最終日に在廊予定)
xavierlaboulbenne galleryにて
  Schoenleinstrasse 5 10967 Berlin
・オープニングは3月7日(金) 18:00〜21:00 <詳細>
・期間中、画廊のオープンは毎週火曜日〜土曜日、午後2時〜6時となります。

【ベルリンでのサイン会】
・4月19日(土) 15:00〜17:00
Eisenhertzにて
 Motzstr. 23, 10777 Berlin

大きな地図で見る
・Facebookのイベントページ:https://www.facebook.com/events/1429217567317220/

2014.03.26

"Interior. Leather Bar." (2013) James Franco, Travis Mathews

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"Interior. Leather Bar." (2013) James Franco, Travis Mathews
(イギリス盤DVDで鑑賞→amazon.co.uk

 2013年のアメリカ製ゲイ映画。
 ハリウッド男優ジェームズ・フランコと、"I Want Your Love"のトラヴィス・マシューズが共同監督した、1980年の映画『クルージング』(ウィリアム・フリードキン監督/アル・パチーノ主演)からカットされた、40分のゲイ・セックス場面を描いたフッテージを想像再現した作品……という触れ込みだったけど……。
 実際には、その再現作業に関わった人々の反応を通じて、何かの化学変化が起こることを期待した系のコンセプチュアルな作品でした。
 で、結論。
 トゥー・マッチ・コンセプチュアル。そして化学変化は起こらず。
 あら残念 。

 コンセプト的な意図は良く判ります。
 具体的に言うと、まず、何故本作を作ろうとしたかという動機部分に関わる、映像作品におけるゲイ・セックス表現に対する規制への問題提起。
 次に、30年以上前の映画のロスト・フッテージを、現代の作家が再構築したときに見えてくるであろう何か。
 そして、ゲイ・セックスの只中に放り込まれたメイン男優の反応を追うことで、『クルージング』という映画の中でアル・パチーノが演じた役柄との共通点が浮かびあがったり、共鳴効果が起こることへの期待。
 そういったコンセプチュアルな意図は、実に明解な作品です。ただし残念ながら、その結果があまり面白いものではなかった……ということ。

 唯一の例外は、映画内映画として提示される再現部分の映像表現。
 おそらくここがトラヴィス・マシューズの担当部分だと思うんですが、これは実にセンシュアルで素晴らしい出来映え。
 ただ残念ながら、その部分の尺は合計しても10分程度しかなく、後は延々、映画のメイキングのようなインタビュー映像とか、主演男優の心の揺れを追ったドキュメンタリーのようなものが続き、そしてそっちが決定的に面白くない。

 というわけで、個人的にはコンセプト倒れの失敗作という印象ですが、コンセプトそのものを楽しむコンテンポラリー・アート的な視点で見れば、ひょっとしたら楽しめる方もいらっしゃるかも知れません。私の口には合わなかったけど。
 でも、もしコンセプトが全て取っ払われて、想像再現部分だけの短編だったら、私は絶賛していたと思います。そのくらい、セックス場面は魅力的。描写が赤裸々なために、残念ながら予告編の中ではその部分は殆ど出てきませんけど……。

2014.03.24

"Hawaii" (2013) Marco Berger

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"Hawaii" (2013) Marco Berger
(アメリカ盤DVDで鑑賞→amazon.com

 2013年のアルゼンチン製ゲイ映画。
 再会した幼なじみが互いに惹かれつつも、相手の気持ちが掴めないために一歩を踏み出せないという一夏の光景を、穏やかなムードで詩情豊かに描いた作品。

 身寄りをなくした青年マルティンは、子供の頃に暮らしたアルゼンチンの田舎町にやってくるが、そこでも知己は既におらず、野宿をしながら様々な家の手伝いをして、その日の食事と現金を得ている。そんなマルティンが、ある日仕事を求めて尋ねた家は、彼が幼い頃に遊びに来た事があるエウヘニオの家だった。
 エウヘニオもそのことを思い出し、マルティンは野宿のことは隠したまま、夏の間エウヘニオの家を修理する仕事を得る。マルティンに惹かれたエウヘニオは、シャワーを勧めたり泳ぎにさそったりするが、彼の裸身を覗き見るのが精一杯で、そこから先へは踏み出せない。
 そんな中、マルティンの野宿の嘘がばれ、エウヘニオは彼を納屋に住まわせることにする。共に暮らしながら、二人は互いに自分でも忘れていた幼い日のことを思い出し、親しさを増していく。
 そしてエウヘニオ同様、マルティンもまた相手のことを意識するのだが、二人の関係は友人以上にはなかなか進展することがなく……といった内容。

 これは秀逸な一本。
 内容的には、これといったドラマ的な起伏があるわけではなく、相手のことが気になるけれど何か行動を起こすことはできず、それも友人的に良い関係性にあるから尚更……といった微細な空気感を、ディテール描写を重ねて描いていくというもの。
 クローズドなゲイ・コミュニティ以外で出会った、同性の誰かに惹かれたとき、まず相手がゲイであるかどうかが判らないが故に、気にはなるんだけれど踏み出せない気持ち。こういった感覚は、私自身も含めて、おそらく多くのゲイにとって、一度は身に覚えがあることなのでは。
 そういった、身近ですごく良く判る感覚にフォーカスを当て、それを丁寧に描き出すこと、それがゲイ映画としてのテーマになり得るという発見に、大きな拍手。

 映画としても良い出来で、空気感のある柔らかで美麗な映像、夏の気怠さを思わせるような穏やかなムード、着替えや午睡といった場面で下着越しの股間を捉えるようなセンシュアルな画面……と、全体がとても静かで、心地よい雰囲気。
 テンポは一貫してゆっくりしているものの、そこには前述したような「相手のセクシュアリティや気持ちが判らない」ことによる、軽い緊張感も同時に漂っているために、ゆったりすぎて弛緩することもない。
 全体的に少なめの会話場面も、その内容は日常的なものや想い出話であって、変にフィクショナルな心情吐露とかではない、そんなリアリズムも佳良。
 最初に思った、「アルゼンチン映画で、この内容で、何故タイトルが『ハワイ』?」という謎も、ラストにそれが軽い仕掛けとなって、ドラマの収束に作用するので納得。予定調和的な部分はありますが、それも雰囲気の良さで自然に乗せてくれる感じ。
 ガツンとくるフックには欠ける作品ですが、エンドクレジットにKickstarterのロゴがあったので、おそらくクラウドファンディングで作られたインディーズ映画なのでしょう。それでこの出来映えなら、これは充分以上に見事。

 美麗な画面と心地よい空気感で綴られる、ゲイならば誰にでも身に覚えがありそうな、ごくごく普通で当たり前の感覚。そんなリアルさを主体にしつつ、同時に詩情や甘美さも押さえ、寸止め系のさりげないエロス表現もプラス。
 テーマといい、クオリティといい、後味の良さといい、ゲイ映画好きなら、まず見て損はない一本です。

2014.03.23

"Gangs of Wasseypur (血の抗争)" (2012) Anurag Kashyap

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"Gangs of Wasseypur: Part 1" (2012) Anurag Kashyap
"Gangs of Wasseypur: Part 2" (2012) Anurag Kashyap
(インド盤DVDで鑑賞、後日Blu-rayで再購入)

 2012年のインド/ヒンディ映画。インド中部の石炭業で知られるエリアを舞台に、イギリス統治時代末期から21世紀現在のタイムスパンで、マフィアやカーストの抗争を3世代、70年間に渡って描いた、クライム大河ドラマ。監督は『デーヴ D』のアヌラーグ・カシュヤプ。
 総計五時間以上に渡る大作で、カンヌ出品時には一挙上映だったらしいですが、インド本国ではパート1と2に分けて上映。日本でも福岡国際映画祭2013で『血の抗争』の邦題で上映あり。

 物語の発端は1940年代初頭のインド。
 石炭業の首都と称されるダンバード近郊、ムスリムが主な人口を占めるワセイプール(?)では、クレシと呼ばれる精肉業カーストが権勢を振るっていた。クレシ一族の長スルタナは盗賊団を組織して、英軍の輸送列車を襲っては食料や家畜をせしめている。
 パシュトゥーン族の長サヒード・カーンは、それを真似てスルタナの名を騙って自分も列車強盗をする。しかし彼はクレシ族の力をあなどっており、報復として部下たちは皆殺しにされ、サヒードと彼の妻、そして従弟のファルハンはワセイプールから追放される。
 サヒードたちはダンバードへ行き、石炭採掘の鉱夫になる。しかし労働環境は劣悪で、鉱夫たちは坑道に入れられると出入り口を鉄格子で閉ざされ、12時間の労働が済むまでは外に出して貰えない。おかげでサヒードは、妻の死に目にも立ち会えなかった。サヒードは鉄格子の番人を殴り殺し、そんな彼に、炭坑の上役ラマディール・シンが目を付ける。
 やがてインドが独立し英国が去ると、炭坑の権利はインド人の元へと戻ってきた。
 上手く立ち回ったラマディールは、ダンバードの炭坑を手に入れ、サヒードに自分と一緒に働かないかと勧める。サヒードはラマディールの右腕となって、かつての同僚の鉱夫たちであっても容赦なく振る舞うようになる。
 実はサヒードには、いつかラマディールを倒して、自分が炭坑を手に入れる野望があったのでが、それを知ったラマディールは、先手を打ってサヒードを謀殺する。ファルハンは、辛くもサヒードの息子サルダル・カーンを連れて逃げ、密かに自分の甥アスガルと一緒に育てる。
 そして20年後、石炭業で儲けたラマディールは、土建業などを経て政界にも打って出、やがてダンバードを牛耳るボスとして君臨する。一方でファルハンは、成人したサルダルに、父の死の真相を告げる。そのときからサルダルは頭を剃り、父の仇を討つまでは決して髪を伸ばさないと誓うのだが……といった内容。

 大いに見応えがあった一本。すっかり気に入ってしまったので、既にDVDを購入していたにも関わらず、後日Blu-rayも出たのを見て再購入してしまったほど。
 前述したあらすじは、これでもまだパート1の1/4程度で、全体からいったら1/8しかきていません。この後、サルダルの妻や息子、愛人、ラマディールの息子、スルタナの息子と従妹などクレシ一派も登場し、殺し合ったり結婚したりという複雑な人間模様が繰り広げられます。
 そんな感じで、1:見慣れない固有名詞多数、2:登場人物が多く関係性も複雑、3:それぞれのパワーバランスを把握するだけでも一苦労……と、面白いんだけれども、きっちり理解しようとするとけっこうハードルが高い作品でもあります。初見時には、まだあちこち良く判らない部分もあり、二度目の鑑賞で把握できたという感じかな。

 最も興味深かったポイントは、ストーリーのアウトライン自体は、まぁ良くある復讐ものっぽいんですが、実際に映画を見ると、そういったテイストとはちょっと違うあたり。
 というのも、復讐劇とは直接関係のないディテールが実に豊富で、しかもそれらも面白いんですな。
 例えば、パート1の主人公であるサルダルというキャラクターにしても、別に四六時中恨みに燃えて、顔を歪めて仇敵のことばかりを考えているわけではない。女房が妊娠してセックスできないので売春宿に行き、追いかけてきた女房に刃物で追い回されて逃げ回ったり、はたまた余所に女を作ったりといった、復讐劇とは直接関係のなさそうな、しかし人間くさいディテールがあちこち描かれます。
 パート2の主人公となるサルダルの息子たちにも、子供時代は徒党を組んでアイスキャンデーを盗むとか、成長してからはそれぞれ年頃の娘さんにホの字になるとか、とにかくディテールが豊富で、しかもそれがクリシェまみれとではない、ちゃんと独自性が感じられるものになっている。拳銃調達のエピソード一つにしても、車のハンドルを改造して手作りしたり、またそれが暴発したり。
 そして、こういった枝葉が完全に余計なものかというと、これがまた決してそういうわけでもなく、それぞれ微妙に本筋の復讐劇にも絡んできたりする。そんなディテールが、ストーリーやキャラクターに複雑な陰影を与え、一般的な復讐劇やヤクザの抗争劇とは、ひと味もふた味も違った魅力になっている感じ。
 特に、サルダルというキャラクターの複雑さは特筆もので、復讐に燃える男系のカッコ良さと、なのに逃走中に短剣を落として慌てるとかいったカッコ悪さもあり、更に、女房を怖がったり息子を溺愛したり愛人にヤニさがったりという、人間くさい可愛さもあったりして、そんな何とも身の丈サイズのリアリティが魅力的。

 ただ、そんなサルダルの陽性の魅力に対して、パート2の主役となる息子ファイザルは、複雑さは同じでも、どちらかというと陰性のキャラ。陽性のサルダルは魅力的で感情移入もしやすく、それが同時に作品世界全体を引っ張っていく牽引力にもなっていたのに対して、性格が内省的で陰性のファイザルは、魅力的ではあるものの、そこまでの圧倒的なパワーはない。
 ファイザルのみならず、基本的にパート2のメイン・キャラクターは、前世代に比べると全体的に卑俗で、魅力や好感度という点では辛いものもあります。
 そうなってくると、パート1では大いに魅力的だった本筋とはあまり関係のないディテールの豊かさが、パート2では話がなかなか前に進まないというイラッと感になってしまっているという部分も、正直なところ少々。登場人物も次々と増え、ただでさえ複雑だった人間関係がよりヤヤコシクなっていくのも、それに拍車をかけてしまう感じ。
 ただし、おそらく作品の主眼は、復讐劇を描くことではなく(とはいえ、いちおう多少の皮肉っぽさも交えつつ、そのプロットはきちんと決着がつきます)、ワセイプールという街に対する妄執に取り憑かれた人々の姿を描くこと、そのものにあるのでしょう。
 それがラストシーン〜エンドクレジットで明示され、同時にこの卑俗で血生臭いドラマを、一気にまるで民話めいた語りもののように転換してみせるという、その鮮やかさは実にお見事。後味も上々です。

 表現面では、人を殺したりバラバラにしたり犬に食わせたりといった、エグいエピソードは色々あるんですが、直接描写はさほどなく、かつ全体にオフビートなノリがあって、これもなかなか面白い。ヤクザ映画でいえば出入りのシーンなのに、妙に醒めたユーモア感覚があるみたいな感じ。
 また、徹底してリアリズム主体ながら(つまりミュージカル場面はなし)、光と色彩にこだわった撮影は実に美しく、また、フィクショナルなドラマと並行して、インドの地方都市の日常光景を描いた魅力も豊富。
 そんなオフビート感や、個々のディテール描写にハマれば、実に面白く見られるんですが、筋立てから想像するようなシンプルな復讐劇の熱さや迫力を期待してしまうと、ちょっと裏切られるかも知れません。とても多層的な魅力があって、一般的なインドの娯楽映画とは一線を画す感じがあります。かといって、変に気取った感じがないのも、これまた面白いんですが。
 似たプロットの、同じくインド映画の大作"Rakht Charitra"2部作と比べると、完成度も技術的にも、こちらの"Gangs of…"の方が上回っているにも関わらず、作品のパワーという点では"Rakht…"の方が勝るというのも、ちょっと興味深い。

 他にも色々と思うところはありますが、それもひとえに作品の持つ多層的な魅力ゆえ。クオリティの高い見応えのある大作であることは確かなので、興味がある方ならまず見て損はなし。
 ディテールとオフビート感とクールな視点が魅力の"Gangs of…"と、濃さと熱さとパワフルさが魅力の"Rakht…"、そんな好対照の2作を比べて見るのもオススメです。

2014.03.20

"Priest of Love" (1981) Christopher Miles

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"Priest of Love" (1981) Christopher Miles
(アメリカ盤Blu-rayで鑑賞→amazon.com

 1981年のイギリス映画。D・H・ロレンスの後半生を、まだ40代頭のイアン・マッケランが演じる(初主演映画らしい)文芸映画。
 85年にディレクターズ・カット版が制作されており、今回鑑賞の米盤Blu-rayも同バージョン。

 コーンウォールに済むロレンスは、海で男友達と全裸で泳いでいたところを見咎められ、更に妻がドイツ人(敵国人)であるために、同地から立ち退きを命じられる。
 一方ロンドンでも、ロレンスの著書『虹』が、猥褻であるとの理由で焚書に処される。彼は妻と、女流画家ドロシー・ブレットを伴って、アーティストたちを贔屓にしているメキシコの女富豪の元に渡る。
 こうしてロレンスは、文明社会と世俗に反発を繰り返し、時に最大の理解者である妻とも衝突しながら、女富豪の元からエルパソ、再びイギリス、そしてイタリアへと居を移す。
 やがてカプリ島へ移ったロレンスは、再び妻との衝突と和解を繰り返し、絵画にも手を染めながら、いよいよ『チャタレイ夫人の恋人』の執筆に着手する。
 しかし同書の出版、絵画の個展などを控えながらも、彼の身体は次第に結核に蝕まれていき……といった内容。

 監督のクリストファー・マイルズという人は、私は初めて聞く名ですが、しっかりとした手堅い仕上がり。この題材なら、もうちょっと表現面に大胆なところがあっても良い気はしますが、危うげのない演出、世界各地のロケーションを活かした美麗な撮影、ドラマチックな音楽の良さなど、作品的な風格は充分。
 まだ若いイアン・マッケランは、流石の上手さ。いささか舞台的な演技が目立つ感はあれども、緩急を効かせた演技は説得力も見応えも充分。前述した冒頭場面では、まだ瑞々しいお肌の、フル・フロンタル・ヌードも披露。
 妻フリーダ役のジャネット・サズマンは、ある意味マッケラン以上の熱演で強印象。どこかで見た顔のような……と思ったら『ニコライとアレクサンドラ』のアレクサンドラ役の人でしたか。他にも『ニジンスキー』『英国式庭園殺人事件』なんかにも出ていたみたい。
 顔見せ的な感じで、メキシコの女富豪にエヴァ・ガードナー、ロレンスを目の敵にしているロンドン警視庁のお偉いさん(?)にジョン・ギールグッド。役者ではなく役柄としては、オルダス・ハクスリー夫妻なんかも出てきます。

 ロレンスのバイセクシャル的な側面に関しては、前述の冒頭場面の他、女富豪の夫である逞しいネイティブ・アメリカンや、『チャタレイ夫人』の森番メラーズを着想する基となった逞しいイタリア人農夫を、何か含みありげに意識している描写があれども、あくまでも何となく匂わせる止まり。
 ここいらへんは、若い頃にケン・ラッセル監督の映画『恋する女たち』(ロレンス原作)を見て、「なにこのホモセクシャルになりそうでならない寸止め感は!」と、変に悶々とした感じを思い出しました(笑)。ロレンス(およびその作品)って、そーゆーものなのかしら… …。
 ただ性愛描写自体に関しては、男女間におけるそれも同様で、ロレンス自身の扱うモチーフや、妻との間で交わされるきわどい台詞、複数の女性と情交がある関係などを、セクシャルな要素をあちらこちらに匂わせながらも、具体的な描写は何もないあたりが、ちょっと興味深かった。ベッドシーンに類する場面としては唯一ある、ロレンスが女性に夜這いをかける場面も、結局は未遂に終わってしまうし……。
 とはいえ、性愛とその表現に関する会話などには、やはり自分の職業柄もあって大いに引き込まれるものあり。ただヒアリングオンリーの鑑賞だったので、かなりの部分は拾い損ねていると思います。Blu-rayだからCC英語字幕が付いてるかな〜と期待したんだけど、残念ながら字幕は入っていませんでした。

 もう一つ、個人的にとても興味深かったのが、ロレンスの絵画展の件。警察の指示のもと、猥褻とされた絵画が撤去押収されてしまうんですが、その中に、画廊が一緒に飾っていた別の作品、それもウィリアム・ブレイクの絵画が含まれていたという、皮肉の効いた描写に思わずニンマリ(笑)。
 具体的には(ちょっとネタバレかも知れないので白文字で)、まず、ジョン・ギールグッド扮する警察の偉い人が、客を装って画廊を訪れ、展示されている絵画の中から《猥褻》に相当するものをリストアップする。そして後日、警察隊がやってきて、リストの作品を一斉に撤去し始める。するとその中に、ロレンスの絵ではなく、画廊が独自に飾っていたブレイクの絵画が混じっている。
 で、画廊の主が「それはロレンスの絵じゃない、もう大昔に亡くなっているブレイクの絵だ」と抗議すると、警官たちは「あっ、そ。もう死んだ奴の絵なんだってさ!」と、その絵は撤去せずに画廊に残していく……という展開です。
 そんな感じで、
官警による《猥褻》の判断と規制を、その滑稽さも交えて小気味よく皮肉っており、これは今の日本でも全く同じ問題が現存しているわけで、そこがかなり個人的にポイント高し。

 というわけで、映画として突出した+αには欠けますが、クオリティは申し分なく、見応えも充分。
 イアン・マッケラン、D・H・ロレンス、性愛表現のタブーに挑戦し続けた作家、表現規制……そういった要素に興味のある方だったら、まず見て損はない一本。

2014.03.19

Mascular Magazineに作品提供

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 ゲイ・アート系のウェブジンMascular Magazineの第8号(フェティッシュ特集号)に、作品を数点提供しました。
 同誌のサイトからPDFを無料でダウンロードできます。
http://www.mascularmagazine.com/
 同号には、世界中から総勢30名ほどのアーティストが参加しており、それぞれ数点ずつ作品を提供。総計260ページ以上、約60MBというヴォリュームなので、お使いの回線状況によって異なりますが、ダウンロードにちょっと時間がかかるかも知れません。
 また、収録作品には外性器の露出やボンデージ、SMなどのアダルト・マテリアルも含まれますので、ダウンロード&閲覧は自己責任でよろしくお願いいたします。

 拙収録作に関しては、自分のフェティシズムが反映された作品を数点セレクト、そこに先方の依頼で、自作品解説を日本語と英語で併記。
 で、この日本語の解説ですが、最初に英文で書いた後、それを再度日本語で書き直すという方法をとったところ(先に日本語で書いちゃうと、それを英訳するのが厄介なので……『あ〜こーゆーの英語で何て言えばいいんだ???』ってことになっちゃうので、最初から英語で考えた方が、自分のボキャブラリのキャパに合った説明だけで留められるから楽w)、そしたらなんか脳味噌の接続が上手くいかずに、直訳調みたいな変に固い日本語になっちゃいました。お前ホントにネイティブかって感じの(笑)。
 まぁ、そこいらへんはご愛敬ってことで、ご寛恕。
 提供作品は基本的に、旧作の中からのセレクトですが、以前企画展用に描いたオリジナル作品(つまりその企画展意外では未発表)を、更にこのMasculine Magazine用に新規着色・デジタル仕上げにしたものが入っています。今のところ、ここ以外では見られない作品なので、宜しかったら是非ご覧あれ。

 前述したように、他の収録アーティストは世界中から総勢約30名と、国籍も作風もバラエティに富んだセレクトとなっています。
 大体が写真作品がメインで、絵画系は私も含めて数人程度。レザーあり縛りあり女装ありコンセプチュアルありと、作品のレンジは色々ですが、野郎系好き&フェティッシュ好きの方なら、かなり面白いラインナップで楽しめるかと思います。
【収録作品例】Gengoroh Tagame | Aurelio Monge | Ron Amato | Olivier Flandrois | Inked Kenny | Wim Beullens
 もちろん各収録作家のプロフィールやサイトリンク等の情報付き。
 前述したようにダウンロード・フリーでもあるので、お時間のあるときにでも是非どうぞ。

2014.03.18

ちょっと宣伝、『奴隷調教合宿』第七話掲載です

Doreichokyogassyuku07 3月21日発売の「バディ」5月号に、連載マンガ『奴隷調教合宿』の第七話掲載です。

 例によって内容は、ラブのかけらもないエロ路線まっしぐらです。
 先月号では一回お休みしてしまいましたが、今月号では、調教の甲斐あって順調に(?)堕ち続けている主人公の痴態を、タップリお楽しみいただけるかと(笑)。
 見せゴマ大ゴマで抜きドコロもしっかり確保。
 是非一冊お買い上げの上オカズに使っておくんなまし。

Badi (バディ) 2014年 05月号 [雑誌]Badi (バディ) 2014年 05月号 [雑誌]
価格:¥ 1,500(税込)
発売日:2014-03-20

2014.03.17

aktaさんのコンドーム・パッケージ画を描きました

Akta_condom
 HIV予防啓発&陽性者支援のNPO法人aktaさんの、無料配布コンドームのパッケージ画を描かせていただきました。
 新宿二丁目のコミュニティセンターakta、及びゲイバーなどで無料配布されるはずなので、お見かけの歳は是非お持ち帰りになり、ホットなセーファーセックスを楽しんでください!

2014.03.16

"Poltergay" (2006) Eric Lavaine

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"Poltergay" (2006) Eric Lavaine
(イギリス盤DVDで鑑賞→amazon.co.uk

 2006年のフランス製ゲイ映画。
『ポルターゲイ』というタイトルから想像がつく通り、新婚夫婦が古屋敷に引っ越してくると、そこには5人のゲイの幽霊が棲んでいて……という《ポルターガイスト+ゲイ》のコメディ映画。

 マルクとエンマの新婚夫婦は、パリ郊外にある古い屋敷に引っ越してきた。
 しかし飼い猫は何かに怯え、マルクがシャワーを浴びると自動的にポラロイドカメラのシャッターが切られて、全裸写真が撮影されてしまい、しかもその写真が行方不明になってしまう。
 更にクローゼットはいつの間にか整頓され、気付かぬ間に壁やビリヤード台に翼の生えたペニスの絵が描かれ、夜になるとどこからともなく怪しい音楽……ってもボニーMとかなんですが(笑)……が流れる等の怪現象が続発。
 やがてマルクは、壁を通り抜ける人影を目撃。そしてそれを追った結果、地下室でクラシック・ディスコ・ミュージックにのって踊っている、5人のゲイゲイしい男たちを見つける。
 しかしそれらを見聞きできるのはマルクだけで、エンマは夫の頭が変になったのではと心配する。また、謎の男たちを追い払おうとしたマルクは、屋敷を訪ねたエンマの父親(でありマルクの雇い主でもある)を、誤ってスコップで殴ってしまう。
 これが決定打となってエンマは家を出て、同時にマルクは職を失ってしまう。
 自分だけが見えるゲイたちの姿にノイローゼになったマルクは、友人に相談したり精神分析医にかかったりするが、返事は「君はゲイだ」とか「潜在的な同性愛傾向がある」ばかり。やがてマルク自身、ひょっとして自分はゲイなんじゃないかと疑い始め、ゲイクラブに行ってみたりする始末。
 しかしやがて、マルクは庭で古ぼけた看板を発見。ネット検索した結果、この屋敷の地下はかつてゲイディスコで、それが70年代末に火災事故が起き、何人か死者も出てたことを突き止める。それによって地下室の5人組も、ようやく自分たちが既に幽霊になっていることを悟る。
 ゲイの幽霊たちはマルクに、自分たちをここから解放してくれと頼み、同時にマルクがエンマの愛を取り戻す手助けをすることにする。
 果たしてゲイの幽霊たちは屋敷から解放されるのか? そしてマルクとエンマの仲は? ……といった内容。

 あちこち小ネタでクスクス笑わせながら、同時にストーリー的にもアイデア豊富でエピソードも盛り沢山、軽いノリとテンポの良さ、それと結末への興味でトントン乗せて見せてくれる、なかなか楽しい一本。
 ちょっとした泣き要素や、ラストの「ええええ、こーゆーオチ???(笑)」なんかも良く、後味は上々。
 ただ、内容が盛り沢山&話の展開が早い反面、ちと盛り込み過ぎなところもあり。特に後半、焦点が幽霊たちの成仏の話に移り、テンプル騎士団だの封印の石だのが絡んでくるあたりは、いかにも安易でイマイチ。ゲイの幽霊5人組の中で、しっかりキャラが立っているのは二人だけというあたりも、ちょい惜しい。
 でもまぁ、ゲイネタ込みの軽いコメディ作品としては、十分楽しめる出来かと。
 ゲイネタの笑いでは、自分もゲイかもと思ったマルクが、ゲイクラブで知り合った男に、自分が建築現場で働いていると言うと、相手が急に「作業服あるか?着てくれ!トルコ語しゃべってくれ!」とエキサイトしだすあたりが、個人的にヒット(笑)。
 あとは、自分が死んでからもう30年も経っていると知って、ゲイ幽霊の一人がしみじみと雑誌を見ていると、パリ市長ドラノエ氏の写真を見て「元彼が市長になってる!」と驚いたり、まぁそういうノリです(笑)。
 また、30年ぶりにパリに出たゲイ幽霊たちが、軒並ぶゲイ・クラブやゲイ・ブックストアなんかを見て「約束の地だわ!」(聖書のアレね)と興奮するあたりは、笑いのシーンではありつつ、地味に良い場面だと思う。
 泣かせ要素も、サラッとしたもんなんだけど、でもいい感じだし。

 というわけで、なかなかウェルメイドなコメディなので、題材に興味のある方ならクスクス笑いながら楽しめるかと。個人的にはオチ(笑)と後味が大好き。
 どんなオチかは、末尾に白文字で書いときますんで、ネタバレOKの方はどうぞ。

 ラスト部分の解説、以下白文字。
 結局ゲイ幽霊たちは、マルクの奮闘も空しく、何百年かに一度だった成仏の機会を逃して、失敗してしまう。
 しかしここで、エンマの仕事が考古学者で遺跡の発掘に従事しているという伏線が効いて、彼女がポンペイだかどこだったか、とにかく古代ギリシャかローマの遺跡から、大量の幽霊たちを屋敷に連れてくる。
 爆発事故で廃墟になっていたゲイクラブも、きれいにリフォームされ、そこで生者も死者も入り交じって(その中には、30年前に死に別れた、ゲイ幽霊とその恋人というカップルなどもあり)、皆で楽しく踊り明かす
というオチ。
 好きだわ〜、これ(笑)。

2014.03.14

"Solo" (2013) Marcelo Briem Stamm

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"Solo" (2013) Marcelo Briem Stamm
(アメリカ盤DVDで鑑賞→amazon.com

 2013年のアルゼンチン製ゲイ映画。監督はMarcelo Briem Stammという人で、これがデビュー作。タイトルの意味は《孤独》。
 失恋の痛手を引きずっている青年が、出会い系のチャットで知り合った見知らぬ青年を家に連れ込むが……というスリラーもの。

 出会い系チャットをしていた青年マヌエルは、そこで出会った青年フリオと外で待ち合わせして、互いに気に入ったので家にお持ち帰りする。
 フリオにシングルかと聞かれたマヌエルは、二年間付き合った前の彼氏に酷く裏切られて分かれたばかりだと言う。一方のフリオも今は付き合っている相手はおらず、しかも失業中で今借りている部屋も契約更新が迫っている等の悩みがあることを打ち明ける。
 やがて二人は肉体関係を結び、互いにフィーリングも合う感じなので、恋人として付き合おうかという雰囲気になる。
 しかしセックスが終わった後、明日は朝早くに女友達が家に来るから今夜は泊められないというマヌエルに、フリオは「セックスが終わって気分が醒めたゲイは、よくそういう嘘をついて相手を帰そうとする」と言う。マヌエルは、女友達が来るというのは本当で、自分たちが今後どう付き合っていくかは、また日を改めて話そうと説明するが、フリオは再び「また今度と約束して、そのまま二度と連絡しないのも、ゲイがよくつく嘘だ」などと言う。
 そんなフリオの様子に、ちょっと異様な感じを受けたマヌエルは、本気でもう帰ってくれと言う。
 フリオは「自分は頭に血がのぼりやすいんだ」とマヌエルに謝り、自分が今いかに孤独か、そんな自分にとって、フィーリングが合ったマヌエルと、一晩一緒に過ごせるということが、どれだけ大きな期待であったかを説明する。
 それを聞いたマヌエルは、帰ろうとするフリオを「女友達が来るのは朝だから」と引き留める。
 二人は再びセックスをし、あれこれ話もして更に打ち解けるのだが、その間もずっと、もう真夜中も過ぎて明け方だというのに、フリオの携帯が何度も鳴り、しかも彼はそれを無視している。
 一方でマヌエルも、フリオと一緒にいながらも、ときおり分かれた元彼のことが頭をかすめ……といった内容。

 これはなかなかの出来映え。
 ゲイなら誰でも身に覚えがあるような設定を使い、丁寧に描かれたディテールが積み重ねられていき、その合間合間にちょっと不穏な気配も漂い……という構成なので、果たしてこれがスリラー方面に転がっていくのか、それともラブストーリーになるのか、先が全く読めない。
 で、あんまり説明するとネタバレになるんで詳細は避けますが、私はすっかりミスリードに引っかかってしまい、「うわ、一本とられた!」という結果に。
 ストーリーにはツイストが何度も入るし、多少の無理はあるものの、伏線も周到に張り巡らされていて、脚本&作劇のレベルは上々。
 ゲイ映画的な部分のみをピックアップしても、全体のリアルな空気感、交わされる会話の妙味、セックス場面のムードなど、昨今の「身の丈サイズのドラマを、空気感やディテールで丁寧に見せる」系のゲイ映画として、充分以上に佳良。
 おそらく低予算のインディーズ映画だと思うんですが、彩度を抑えた柔らかな色調や、被写界深度を利用したアウトフォーカスなど、撮影のレベルは高く、役者の演技も文句なし。
 ほぼ密室劇、それもたった一晩の出来事を描いているだけなのに、リアルでゆったりとした空気感に、ときおり緊張が走るという構成を上手く用いていて、全く弛緩することはありません。先の読めない展開の面白さに加えて、見応えもしっかり。

 ツイストが入る展開なので、そのあたりで好き嫌いは分かれそうですが、ゲイ映画ならではという醍醐味がありつつ、同時にゲイ映画ではあまり見たことがないタイプの内容でもあり、クオリティも上々。
 リアルなゲイドラマの良さと、スリラー的な面白さが上手く合体した、ちょっと異色の一本で、間違いなく一見の価値はあり。

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